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越智道雄
今年2月、日本中が見守った天皇陛下の心臓手術。執刀を任されたのは天野篤教授。 妥協を許さず、あくなきチャレンジをし続ける天野流美学とは。 快活ななか、時おり孤高の剣豪のような横顔も見せる天野さんにお話を伺ってきました。
Vol.50(2012年11月)

最近、僕は自分のことを“老春プロデューサー”だと考えているんです。
 “老春”とは、僕の患者さんが言った言葉。78歳の彼女はご主人を亡くしたことから手術を受ける決意をされたのですが、手術後僕にこう話された。
 『先生。これから私、自由になった時間、老春を謳歌するわ』って。僕は「そうか、老の青春か」と感心したんですね。

老いるということは現代では「先がない」など否定的に捉えられがちですが、本来“老”とは大老や老中など、経験豊富な人、深みがあり、道を究めた人という意味があるんです。

父に教えてもらった詩で、マッカーサー元帥が座右の銘としていた、サミエル・ウルマンの『青春』に、こんな一節があります。青春とは年齢ではない。気持ちが老いたときに人は老いる。意欲的な人はいつも、青春なのだと。

高齢の皆さんが手術後さらに生き生きとこの“老春”を謳歌してもらえるよう、僕は病気の障害を取り除くコーディネイトをしたい。生き続けていただくために尽力したい、というのが今の僕自身のブレない信念でもありますね。

年に二回、僕主催で患者さんを対象にしたゴルフコンペを開くんですが、参加者最高齢は85歳を超えています。その方達と僕はスコアを争っているわけだけど(笑)。そうして手術後高齢の方がフルに楽しんでいる姿を見ると最高に嬉しいですね。

高齢者の手術は去年ぐらいから増えていて、いまや80歳台の手術は全体の13%。そもそも高齢で心臓病になる方は、がんや糖尿病など数々の病気を克服してきたエリート。からだの土台が良い、いわば選ばれた人なんです。

平均余命にするとあと数年という高齢の患者さんに、この先20〜30年間は持つ心臓の手術をすることもある。若い人と同じ手術をする社会的な意味はどうなのか?と、僕も考えた時期がありました。

でも長老という言葉のように、ある集団にとって経験豊富な人物は絶対必要な存在。最高齢の人がピンピンしていたら、若者にも活力が生まれるんですよ。特に戦争を生で体験し、公衆衛生の悪い中を生き抜いてきた方々は、これからの日本を引っ張る、伝承すべき智恵を持っている。そんな選ばれた方々に、ぜひ一日でも長く元気でいてほしいんですね。

健康的なシニア生活を送るためには、両陛下にも申し上げましたが、病気以上にケガに気を付けていただきたい。どうしても身体能力は落ちてくるから。そのためには基礎体力を維持し、毎日自分なりの規則的な習慣を大切にして、元気に過ごしてもらいたいと思います。

日々研鑽し続け、感覚を研ぎ澄ますように生きていると、人生チャンスが訪れる瞬間があります。そのチャンス、一瞬の“流れ星”をつかめるかどうか。
 その僕にとっての“流れ星”が、今年の天皇陛下の手術でした。指名いただいたときの正直な心境は「やっぱり」というのと「宝くじを買い続けていたら、当たった」の背反する2つでした(笑)。

この手術は今の自分が一番上手にできるという自負もありました。例えば幅15pの平均台があって片足ケンケンで渡るとすると、普段運動している方ならまぁどうにか渡れますよね。でもそれが地上50メートルの高さにあったら果たして渡れる人がいるかどうか。天皇陛下の手術はまさにそんな状況でした。
そんな中でもチャレンジ精神を失わず妥協もせず、最後はストレート直球勝負で行こうと手術に臨んだわけです。
陛下は順調に回復され嬉しい限りですが、僕は今後“天皇陛下の執刀医”という冠詞にこだわらないつもりです。それに安住することはできるけれど、それよりも「次なる何か」を苦心しつつも探していきたい。そうしないと僕の道は開けないとさえ思っているんです。

そもそも僕は手術しか能のない人間なわけで。ゴルフだっていくらやっても、うまくならないしね(笑)。

将来医者になると心に決めたのは、大学受験に失敗し3浪生活をしていたころ。「自分ほど医者に向いている人間はいない」と当時確信がありました。子どものころからプラモデルづくりが得意で手先が器用だったし、ひとつのことを集中してやり遂げる能力があったから。

手術中は頭を使わないんですよ。五感を最大限に使い、もし術中に不測の事態が起きても3秒で解決して次の手段に取り掛かれるように努力しています。
手の感覚を研ぎ澄ますために、左右の爪をハサミで切ったり、バランスを考えて皿洗いをしたり。自在な感覚を磨く細かな鍛練は長年続けていますね。

仕事が終わり体を横たえるのは教授室のソファか当直室のベッド。日に4例手術したらその記録を書くなど夜もたくさんやることがあるので、病院で寝泊まりすることが多いですね。ま、深夜自宅に帰って家族に気兼ねしてお風呂に入るよりも、病院でシャワー浴びたほうが快適っていうのもあるけれど(笑)。

これまで携わった心臓手術は6000例。年間平均で400例の手術を手掛けています。それでもこの先、もし2例同じエラーを続けて患者さんを亡くしたら、僕は手術することをそこで辞めます。
 2例の失敗で辞めるなんてあまりにも厳しすぎる。そう思われるでしょうが、人の命を預かっている以上、当たり前のことなんですね。
 僕はアントニオ猪木さんのファンで、一度彼に直接聞いてみたことがあるんです。プロレスは観客を楽しませるショー的な要素が多いスポーツですが、そのなかで生きるか死ぬかの真剣勝負はあったのかと。彼は「真剣勝負とショーの切りかえをしていた」と答えました。周囲の反響を計算ずくでね。
 僕自身手術は台本のある治療法で、その中の一部は周囲を魅了する“ショー”だという感覚があります。ある技術をもっと早い速度でやり遂げられないか。挑戦を続け、やがては医療史に新たなる歴史を作っていけないか、と気持ちを鼓舞して。

 あらゆる無駄をそぎ落とし、常に最先端の現場で闘う。これからも、日々真剣勝負なのだと感じています。

 
 

1955年生まれ。埼玉県出身。’83年日本大学医学部卒業。亀田総合病院心臓血管外科医長、新東京病院心臓血管外科部長など有力市中病院にて研鑽を積み、2002年より順天堂大学医学部心臓血管外科教授。これまで手がけた心臓手術は6000例で、驚異の手術成功率を誇る。日本を代表する冠動脈バイパス手術のスペシャリスト。著書に『心臓病 名医の言葉で病気を治す』(誠文堂新光社)など。

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